Sayuri Ueda's Work

作家・上田早夕里の著作紹介(※随時更新中)

オーシャンクロニクル・シリーズ

【概要】 オーシャンクロニクル・シリーズ

最初の短篇作品「魚舟・獣舟」は、2006年に光文社文庫「異形コレクション」シリーズ『進化論』に掲載されたホラー色の強い作品である。四百字詰め原稿用紙換算40数枚の短い作品で、魚舟と人との関わりの基本部分のみを扱っている。

シリーズ全体は長篇と短篇によって構成されており、現在も執筆が続いている。最終的には、千年に近づく長い歴史(その中には現人類が登場しない時代も含まれる)を描いて完結する予定。通常、各作品は海洋冒険SFのスタイルをとっている。海洋以外の場所が舞台になることもある。


『魚舟・獣舟』
 短編初出:2006年
 同タイトル 光文社文庫:初版 2009年

現代社会崩壊後、陸地の大半が水没した未来世界。そこに存在する魚舟、獣舟と呼ばれる異形の生物と人類との関わりを衝撃的に描き、各界で絶賛を浴びた「魚舟・獣舟」。寄生茸に体を食い尽くされる奇病が、日本全土を覆おうとしていた。しかも寄生された生物は、ただ死ぬだけではないのだ。戦慄の展開に息を呑む「くさびらの道」。書下ろし中篇を含む全6篇を収録する。

収録作:「魚舟・獣舟」(*オーシャンクロニクル・シリーズ 初出:2006年)
「くさびらの道」「真朱の街」「饗応」「ブルーグラス」
「小鳥の墓」(書き下ろし中篇)


『華竜の宮』
 早川書房Jコレクション 初版:2010年
 ハヤカワ文庫版:上下 二巻組

ホットプルームの活性化による海底隆起で、多くの陸地が水没した25世紀。未曾有の危機と混乱を乗り越えた人類は、再び繁栄を謳歌していた。陸上民は残された土地と海上都市で高度な情報社会を維持し、海上民は海洋域で〈魚舟〉と呼ばれる生物船を駆り生活する。陸の国家連合と海上社会との確執が次第に深まる中、日本政府の外交官・青澄誠司は、アジア海域での政府と海上民との対立を解消すべく、海上民の女性長(オサ)・ツキソメと会談する。両者はお互いの立場を理解し合うが、政府官僚同士の諍いや各国家連合の思惑が、障壁となってふたりの前に立ち塞がる。同じ頃、IERA〈国際環境研究連合〉はこの星が再度人類に与える過酷な試練の予兆を掴み、極秘計画を発案した――。

人と海に生きる者との交流、対立、闘争。人工知性(AI)と人との友愛などを通して、地球と人類の運命を真正面から描く、黙示録的海洋SF巨篇。

 第32回日本SF大賞受賞作
 「SFが読みたい! 2011年版」(早川書房)ベストSF2010国内篇第1位


『リリエンタールの末裔』
 ハヤカワ文庫:初版 2011年

彼は空への憧れを決して忘れなかった――。

長篇『華竜の宮』の世界の片隅で夢を叶えようとした少年の信念と勇気を描く「リリエンタールの末裔」ほか、人の心の動きを装置で可視化する「マグネフィオ」、海洋無人探査機にまつわる逸話を語る「ナイト・ブルーの記録」、18世紀ロンドンにて航海用時計(マリン・クロノメーター)の開発に挑むジョン・ハリソンの周囲に起きた不思議を描く書き下ろし中篇「幻のクロノメーター」など、人間と技術の関係を問い直すSF中短篇集(短篇3作+中篇1作)

収録作:「リリエンタールの末裔」(*オーシャンクロニクル・シリーズ 初出:2011年)
「マグネフィオ」「ナイト・ブルーの記録」
「幻のクロノメーター」(書き下ろし中篇)


『深紅の碑文』
 早川書房Jコレクション 初版:2013年
 ハヤカワ文庫版:上下 二巻組

陸地の大部分が水没した25世紀。人類は僅かな土地で暮らす陸上民と、生物船〈魚舟〉とともに海で生きる海上民に分かれ共存していた。だが地球規模の環境変動〈大異変〉が迫り、資源をめぐる両者の対立は深刻化。頻発する武力衝突を憂慮した救援団体理事長の青澄誠司は、海の反社会勢力〈ラブカ〉の指導者ザフィールに和解を持ちかけるが、頑なに拒まれていた。

いっぽう、困難な時代においても、深宇宙研究開発協会は人類の記録と生命の種を系外惑星に送り込もうと計画していた。その理念に共感した星川ユイは協会で働き始めるが、大量の資源を必要とする宇宙開発は世間から激しい非難を浴びる。 ユイは支援を求めて青澄に会いに行くが……。

苛烈を極める物資争奪戦、繰り返される殺戮、滅亡を意味する環境変化――いくたびの難事を経てなお、信念を貫いて生きる者たちを描破した比類なきSF巨篇。


『獣たちの海』
  ハヤカワ文庫:初版 2022年

 《この海原が凍てつくとも、我々は魂を燃やし続ける》

陸地がほぼ沈み〈プルームの冬〉が迫る25世紀。騒乱の時代を背景に海で生まれ、そこで生きざるを得ないものたちが無数にいた。

〈朋〉を持たない若者が出会った一頭の〈迷舟〉。生まれ、成長し、変異していく〈魚舟〉。世界が終わるその前に、最後の旅に出た孤独な老人と〈人魚〉。そして、マルガリータ・コリエを拠点に出会った、ふたりの女性の強い心の絆。
美しくも激しい生きざまを叙情的に描く、静かな力強い物語。
「オーシャンクロニクル・シリーズ」初の全篇書き下ろしSF中短篇集(短篇3作+中篇1作)

収録作:「迷舟」「獣たちの海」「老人と人魚」
「カレイドスコープ・キッス」(中篇)