報告(05) 資料の整理

創作サポートセンターの対談では、私たちの一週前の回が「時代小説の書き方」でした。鈴木輝一郎さん、木下昌輝さん、楠乃小玉さんが鼎談を行い、このときに、資料の集め方や整理について詳しい話が出たようです。時代小説・歴史小説関係は、とりわけ膨大な資料が必要となりますので、大変なご苦労があるようです。

以下は、堀晃さんと私との回で、当日、実例として出た話の一部です。(詳細を付け加えています)


■資料の種類(紙版か電子版か)

私は主に紙書籍で集めていますが、大判の写真集や図鑑などが電子版であると、本当に助かります。置き場所に困りませんし、いつでも簡単に内容を確認できますので。最近では、科学雑誌がすぐに電子化されるようになったのが、大変ありがたいです。
逆に、活字主体の資料は、原則的に紙書籍で揃えています。理学系・人文系問わず、専門書ほど電子版がない、という状況があるので仕方がない部分もあるのですが、検索性がもっとよければ、活字主体の本でも電子版が欲しいですね。
電子版といえば、「国立国会図書館デジタルコレクション」に、古い時代の書籍がスキャン版で入っているのは本当に助かります。調べたい項目が限定されていて(たとえば数行程度だけ必要)その部分がどの本に収録されているのかもわかっていて、けれども古書で買うと万円単位になる、どうしよう……という場合に、デジタルコレクションに該当書籍が登録されていると実にありがたいです。学術関係の資料が大学側によってPDF化され、ネットで一般公開されていると、これも大変ありがたいです。ものによっては、こういう形でしか、もう資料を確認できなかったりしますので。論文も、電子化されて一般公開されていると、本当にありがたいですね。


■分野別の整理

複数の作品を並行して書くことが多いので、作品ごとに書棚を分けて資料を並べています。執筆が終わると、その分をごそっと抜いて、新しい作品の資料と入れ替える。不要になった書籍は「今後も使うもの」と「しばらくはもう使わないだろう」というものに分けて、後者は倉庫へ。倉庫に運んだ分は、何年か経って「これはもう使う機会がないな」と感じたら処分です。こうやって、最初の時点で倉庫に振り分けておくと、そこから順番に処分していけばいいので手間が省ける。
歴史関係の本は絶対に捨てられないけれど、工学系(宇宙開発系含む)の資料はある程度年月が経つと容赦なく処分できる(現場がどんどん進歩しているから)という話を聞いたことがあります。工学系でも歴史的な価値を持つ資料は捨てられませんが、その他は、どんどん書籍を処分して知識を更新したほうがいいようです。


■その他の置き場所

頻繁に使う資料は作業机の近くに配置しておきたいので、本棚以外に、衣料用の収納ボックスを書籍の収納に利用しています。多段式ではなく、一個ずつ独立しているタイプのボックスを使っています。これは、ボックスのほうでも、作品ごとに資料を分けているから。連載作品などで執筆中に何度も確認が必要な資料は、こうやって机の近くに置いておくと便利。
なぜ、衣料用のボックスを使うかというと、まず、本体がプラスティック製で軽いので、本を詰めても不必要に重くならない。キャスター付きの製品が多いので、まとまった分量の書籍を、一気に、持ちあげずにそのまま好きな場所へ移動できる。”froq”のように蓋が本体と一体化したデザインだと(しかも蓋が前開き)なお便利ですが、このあたりは個人のお好みで選んで下さい。一般的には、上部から蓋を分離する製品のほうがきっちり長方体になっているので整然と本を詰めやすい。箱形になっていない、ただの「多段式キャスター付きラック」(図書館で、職員の方が返却本を棚へ戻すときに使っているアレ)を使ってもいいのですが、うちには猫がいるので、剥き出しの状態で本を置いていると、表紙を噛まれて本に穴があいてしまうのです。だから、ボックスに収納して猫から本を守る。

 

SF小説でも歴史小説でも、資料の集め方や使い方などには共通点があります。ジャンルSFでデビューした作家が、キャリアを積んでいく過程で、歴史小説も手がけ始めることがありますが(半村良さん、光瀬龍さん等々、例は多い)意外と、創作時の論理の積み重ね方に共通項があります。ファンタジー小説は、もともと、歴史との馴染みがいいですね。興味のある方は、どんどんジャンルを越境して書いてみるといいと思います。