●一ヶ月余、更新を停止していました。ようやく、昨年末からの仕事ラッシュが収まり、いまは、じっくりと新作を執筆しています。
●来週末(30日)は、いよいよ第8回日経星新一賞の選考会です。応募者の方々は、どきどきしながら結果を待っていることと思います。今回、各選考委員は40本の応募作を読みました。このうち、何らかの賞が授与されるのは12本だけです。星新一賞は、受賞作に対する選評しか公開されない仕組みなのですが(受賞作への選評は、受賞作をまとめた無料電子書籍に掲載されます)私は、どの作品も必ず何度も読み、40本、すべての作品へのコメントを、自分で作った記録ノートに残しています。すべて平等に、じっくりと時間をかけて何度も読み返しましたので、応募者の方は安心して下さい。
最終選考に残った全員に評価をお伝えする機会がないのは心残りですが、今回の結果にかかわらず、これからも小説を書きたい、プロになりたいと強く思っておられる方には、どのような結果になっても、「書き続けて下さい」という言葉をお伝えしたいです。「どんな分野でも、それを続けられるということは、才能があると言っていいんじゃないですか」と、昔、桂枝雀さんが入門してくるお弟子さんに答えたことがあるそうで、私はアマチュア時代、この言葉を北野勇作さんから教えて頂いたので、自分でも、他の人に伝えることにしています。
デビュー前の書き手の個性はさまざまです。長編のほうが得意な方、短編のほうが得意な方、どちらも書ける方などなど。その性質も、年月の経過と共に変わっていったりします。短編ではどうしても評価されなかった書き手が、突然、長編でデビューするという例は珍しくありません。私は、このパターンでした。いくら短編を応募しても評価されない……と悩んでいる方がおられたら、一度、長編の賞へ切り替えることも考えてみて下さい。また、執筆ジャンルを変えるのも、ひとつの手段です。私は、ファンタジーからSFに変えた途端、デビューできました。自分で考えていたよりも、実は、SF向きの作風だったのですね。アマチュア時代、ずっと、周囲からファンタジー・ジャンルを勧められていたので、なかなかSFへの応募に目が向かなかったのです。勿論、ファンタジー分野で修業したことは、プロになってから、別の形でずいぶん役に立ったので、まったく無駄にはなっていません。
人の個性はさまざまです。これは違うな、と直感したら、迷わず方向転換しましょう。そして、転換した先でだめだったら、また、元のところへ戻ってきたらいいんです。そのときに、出先で経験値を積んで帰ってきているので、同じ場所へ戻っても、今度は違った風景が見えますよ。
人生は、何が転機になるかわかりません。結果が出て気持ちが落ち着いたら、受賞した/受賞しなかった、にかかわらず、どうかもう一度、「自分が本当にやりたいことは何なのか」ということを、じっくりと考えてみて下さい。自分が一番やりたいことは何なのか、自分が一番欲しいものは何なのか、小説を書くためにはそれが一番重要です。「私は××が好き!」と言える人が最も強いのです。それを忘れないで下さい。
それでは、選考会の日まで、もうしばらくお待ち下さい。