電子書籍版『火星ダーク・バラード』の配信が始まりました。
ミューズ叢書と違って、Kindle版のみでの提供となります。他ショップでは扱いがありませんので、ご注意下さい。
底本としたのは2008年発刊の「文庫版」(大幅改稿版)です。今回、さらに手を入れて、誤字の修正と再度の改稿を行いました。ストーリー自体は変わっていませんが、なにしろ初版発行が2003年ですし、2008年に一度手を入れたものの、その後10年も経過しているので、電子化にあたって、あらためて細部の表現を見直す必要がありました。
もともと、最初からクラシックな形式で書いていた作品なので、ある種の「懐かしさ」はそのまま大切に残しつつ、「2018年現在においては変えるべき」と判断した部分には手を入れています。
なお、今回、発刊したのは「私家版」です。
紙版(文庫版/ひとつ前のバージョン)を角川春樹事務所さまに販売してもらいつつ、電子版は著者自身が出すという、実験的な販売形態をとっています。
紙版の発行元である角川春樹事務所さまは、いまでも、積極的に紙本をメインに売っていくスタイルの会社です。電子書籍を作成する専門部門を持っていません。そのため、これまで、本作に対して読者の方から電子化(Kindle化)のリクエストを頂いても、お応えできない状況が続いていました。そこで、角川春樹事務所さまに著者が相談したうえで、先様のご厚意により、オフィス・トリプルツー(上田早夕里事務所)の責任編集で、電子化作業を行うこととなりました。
たまたまですが、デビュー15周年に電子化できたのは不思議なご縁です。今年はデビューの年と同じように、火星が大接近した年なのです。
なお、紙版の版権は、いまでも角川春樹事務所さまがお持ちです。今後も紙版の取り扱いを続けて下さいますので、どうしても紙の書籍(文庫)で欲しいという方は、書店でのご注文をお願い致します。ただ、上記のような事情から、紙版は、ひとつ前のバージョンのままです。
『火星ダーク・バラード』の電子化が完了したことで、ようやく「小鳥の墓」(短編集『魚舟・獣舟』所収/光文社文庫)と『火星ダーク・バラード』との関係を、電子書籍の形で手軽に確認できるようになりました。これは長年気になっていた問題でしたから、ようやく電子版の販売を始められて、ほっとしています。
デビュー作なので、著者としては気恥ずかしい部分も多々ある作品です。しかし、私が想像していたよりもずっと息長く、読者の方から愛されている作品でもあるようです。難しいことは何もしていない(しかし、真面目に熱意をこめて書いた作品であることは、他の作品となんら違いはありません)ので、美味しいお菓子を召し上がって頂きながら、あるいは美味しい飲み物を片手に、気軽にページをめくって頂ければ幸いです。
あらためて、本作をよろしくお願い致します。